中高年に多い膝痛!基本的な疾患と治療について。
膝の痛みを訴える患者さんは、若い人よりも圧倒的に中高年の方が多い。
それは年齢の経過とともに関節内の組織が痛むからで、当然と言えば当然のこと。
しかし、もしあなたが膝の痛みを抱えているのならば『年のせいだから仕方がない』と諦めるのではなく、自分に合った治療法を見つけることが大切です。
痛みを我慢し続けると、必然的に運動不足になり、肥満や高血圧、糖尿病などの成人病を誘発することになります。
とは言っても、
- 自分に合った治療法なんてわからない。
- そもそも膝の疾患なんて知らない。
- 手術はどんなものがあるの?
こんな疑問を抱くでしょう。
そこで今回は『中高年の膝治療』について、疾患も交えながら書いていきます。
参考文献:中高年*1の膝の治療
覚えてほしい!膝の痛みを引き起こす疾患は2つ
中高年の膝の痛みの原因として最も多いのは『変形性膝関節症』です。
そして頻度は多くないものの変形性膝関節症と似て非なるもので『膝関節の骨壊死』というものがあります。
- 変形性膝関節症(OA)
- 膝関節の骨壊死(ON)
主にこの2つの疾患の病態*2と治療法について以下書いていきます。
中高年に最も多い『変形性膝関節症 』
関節の中にある組織が壊れて、やがて関節の骨まで変形して膝の痛みを起こす病気。
関節内組織は主に、軟骨や半月板。
膝のクッション的役割を果たす組織が、すり減ることで膝のバランスが崩れ変形するといった具合です。
軽度のものは筋力トレーニングで改善できる
程度が軽いものに関しては、下肢の筋力トレーニングやテーピングなどで改善可能。
膝だけに原因があるのではなく、実は膝の周りの筋肉に問題がある場合が多いのです。
ハムストリング呼ばれる筋肉(太ももの筋肉)が緊張し、膝を曲げた状態で歩いているうちに膝周囲が痛くなっている。
というケースが多いんですね。
このような場合は、縮んでいる筋肉をほぐすだけでも痛みは半減します。
しかし、症状が進行している場合には手術が必要です。
手術に至るまでの流れ
①膝周囲の筋肉をほぐす。
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②筋力トレーニング
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③ヒアルロン酸注射
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④手術
①〜③までは経過観察。
肥満傾向のある方は、糖質制限によるダイエットを指導しています(当院の場合)
関連記事:【糖質制限】血糖コントロールをして健康な身体を手にしよう!
骨の細胞が死んでしまう!?『骨壊死』
頻度は多くないものの変形性膝関節症と似ているものが、骨壊死です。
骨壊死とは、骨の中の血液が突然途絶えて、骨の一部が死んでしまう状態のこと。
局所循環障害と呼びます。
骨が死んだなんて聞くと驚いてしまいますよね、、、。
しかし、治る・治せる病気なので安心して下さい。
はっきりした原因は現在でもわかっていません。
最も多い年代は60歳代後半ですが、中高年であればどの年代でも起こります。
*症状*
変形性膝関節症と同じです。
- 膝の痛み
- 膝に水が溜まる
症状が落ち着くケース
骨壊死そのものが治るわけではありません。
痛みや腫れが少しづつ和らぐケースです。
月に1〜2回、あるいは年に数回病院を受診し経過観察します。
後に手術を受ける人もいますが、緊急性は低いです。
強い症状が続くケース
手術の適応です。
症状の改善がみられない場合や『毎日痛くて早く改善してほしい』という場合は手術を行います。
退院後1〜2ヶ月は杖使用。その後は不要。
手術後半年から1年ほどで正座が可能になります。
骨壊死の初期はレントゲンではわからない
この病気の厄介なところは、初期段階での診断が難しく発症してから2ヶ月ぐらいはレントゲン検査でもほとんどわかりません。
仮にレントゲンで異常なしと判断されると、一般的に軽度の変形性膝関節症と診断されてしまいます。
確実な診断はMRI検査で
MRI検査をおこなえば、初期の段階でも発見できます。
しかし、時間もお金もかかるので闇雲に使うわけにはいかない。
病院側は儲かりますけどね(笑)
膝の手術と種類
膝の手術は主に以下の3つ
- 関節鏡の手術
- 変形した脚の角度矯正をする手術
- 人工関節置換術
膝の手術と聞いて、人工関節をイメージする方も多いと思います。
しかし、人工関節が適応となるのは症状が重い方だけ。
ほとんどの場合『関節鏡の手術』か『脚の角度矯正の手術』で対応可能です。
*大まかな分類*
O脚の変形がない人:関節鏡による手術
O脚の変形がある人:変形した脚の角度矯正をする手術
重症例:人工関節置換術
関節鏡の手術
膝に数箇所、5mm程度の小さい傷をつけてカメラ(関節鏡)を挿入し関節内をみます。
そして、損傷した半月板を切除したり、軟骨のカケラを取り出していく手術です。
膝の中の大掃除といった感じです。
麻酔は全身麻酔。
病院によっては局所麻酔でおこなっているところもあるようですね。
ほとんど場合日帰りです。
術後2〜3日は自宅安静が必要ですが、デスクワーク程度なら翌日から可能です。
*メリット*
- 体に与える負担も小さい。
- 日帰りのケースがほとんど。
脚の角度矯正をする手術
O脚やX脚などの曲がった脚をまっすぐにする手術です。
日本人の場合O脚(膝と膝の間が開いた状態)に変形する人が多く、手術件数はX脚の20倍です。
この手術、正確には高位脛骨骨切り術と言います。
膝下の脛骨と呼ばれる太い骨の一部を切り出し、曲がった骨を矯正します。
固定は、特殊な金属プレートとスクリューを使用。
手術から1年後に金属を取り除きます(抜釘術)をおこないます。
入院期間は、およそ2週間です。
人工関節置換術
変形や損傷の程度が大きい関節面を削ってきれいにし、人工関節で補う手術です。
この手術の最大の特徴は、どんなに変形が進行した膝でも手術が可能という点。
- 膝の内側、外側の両方が変形している
- 軟骨以外にも靭帯なども損傷している
このような方が対象です。
イメージとしては『総入れ歯』みたいな感じでしょうか。
耐性年数があり、一般的には15〜20年です。
最後に
今回は『中高年の膝治療』について書きましたが、年をとれば誰だって膝の痛みはでます。
20代の私だって、関節内の組織は傷ついているものです。
しかし、膝周囲の筋肉が発達しているために今は痛みを感じないだけ。
- 柔軟性
- 筋力トレーニング
- 膝に負担をかけないこと
この3つはとても重要です。
膝の痛みが軽度の場合、手術を受けなくてもストレッチや筋力トレーニングで改善は可能。
ふくよかな方は、ダイエットをして膝にかかる負担を減らして下さいね!